フジクラ vs SWCC|同じ電線株なのに株価が動く理由がまるで違った

2026年 電線株 徹底比較
同じ「電線株」でも、
中身はまるで違う。
AIインフラを制す光ファイバーの覇者 / 電力網を支える縁の下の守護者
Introduction
「電線株」に火がついた理由
フジクラ(5803)、SWCC(5805)——。
名前だけ聞くと、「地味な製造業」のイメージが浮かぶ。
ところが。
気づけばどちらも株価が数倍になっていた。
きっかけは生成AIの爆発的な普及だ。ChatGPT、Claude、Gemini……。AIを使うたびに、どこかのデータセンターのサーバーが動き、膨大な電力と高速な通信インフラを消費している。そのインフラを物理的に支えているのが、電線・光ファイバーメーカーだ。
しかし。いざ「電線株、買おうか」と調べると、フジクラとSWCCは同じ「電線」でも、稼ぎ方がまったく異なることがわかる。
この記事では、看護師の視点から両社を「患者さんで例えるなら、どちらが重症で、どちらが安定しているか」みたいな感覚で、徹底的に比べてみる。
Company Profile
まず、何をしている会社なのか
フジクラ(5803)
- 1885年創業・独立系電線大手
- 光ファイバーケーブル・融着接続機が主力
- データセンター向けに特化した成長株
- GAFAMのDC増設に直接採用実績
- 売上高1兆1,824億円(2026/3期)
- 日経225採用銘柄
SWCC(5805)
- 旧・昭和電線HD。2023年に商号変更
- 電力インフラ向け高電圧ケーブルが主力
- 発変電所・送配電網を支える縁の下
- SICONEX®・e-Ribbon®が戦略製品
- 売上高2,777億円(2026/3期)
- 東証プライム上場
規模だけ見ると、フジクラはSWCCの約4倍の売上を持つ大型株だ。しかし、株式投資として面白いのは「規模の大小」だけじゃない。どちらにどんな”成長エンジン”があるか、だ。
Core Business
稼ぎ方が根本的に違う
フジクラ——「光でつなぐ」AIインフラの主役
フジクラの現在の収益構造は、ほぼ「情報通信事業の一本足打法」と言っていい。2026年3月期の情報通信事業の営業利益は前年比1.7倍の1,527億円に達し、全社利益の8割超を占めた。
なぜそこまで強いか。答えは「光ファイバーを作るだけでなく、つなぐ技術も持っている」からだ。フジクラは光ファイバーを現場でつなぐ「融着接続機」で世界トップシェアを誇る。データセンターの建設現場では、光ケーブルの敷設・接続が大量に必要になる。その現場で選ばれ続けているのがフジクラの製品群だ。
さらに2026年3月には、国内データセンター向けとして国内最多心数となる4,000心の超高密度光ファイバーケーブルを市場投入。将来的には13,000心超も視野に入れている。
SWCC——「電力を通す」インフラの守護者
SWCCの主戦場は、データセンターに届く「一歩手前」だ。発電所から変電所、変電所からデータセンターへ——その電気を運ぶ「大動脈」を支えている。
戦略製品はSICONEX®(サイコネックス)。高電圧電力ケーブル用のコネクターで、発電所・変電所の電力機器と電力ケーブルを接続する部品だ。従来の接続工事では職人が4〜5人がかりで丸一日かかっていた作業を、プラグイン構造で大幅に省力化できる。工期が短くなるうえ、耐震性も高い。そのため、AIデータセンターの急増に伴う電力インフラ整備でもSICONEX®の需要が急拡大している。
もう一つの注目がe-Ribbon®(e-ケーブル型光ファイバー)。SWCC独自の間欠接着リボン型光ファイバーで、データセンター向けの通信需要にも対応する。フジクラとは異なるアプローチで、光ファイバー市場にも食い込んでいる。
Financial Data
数字で見る2026年3月期決算
| 指標 | フジクラ(5803) | SWCC(5805) |
|---|---|---|
| 売上高 | 1兆1,824億円 | 2,777億円 |
| 売上成長率(前年比) | +20.7% | +16.8% |
| 営業利益 | 1,887億円 | 273億円 |
| 営業利益成長率 | +39.2% | +30.5% |
| 純利益成長率 | 大幅増 | +65.3% |
| 自己資本比率 | 改善傾向 | 47.6% |
| 配当(2026/3期) | 215円 | 223円(大幅増配) |
実は。純利益の伸び率では、SWCCが+65.3%増と驚くべき数字を出している。フジクラの”絶対額”には及ばないが、成長速度だけを見ると侮れない。
また配当面では、SWCCが136円から223円へと大幅増配を実施。株主還元の積極性でも目立っている。
Stock Price
株価の動き——上がり方の質が違う
フジクラ 株価推移
- 2024年:日経平均採用銘柄で値上がり率トップ(約6倍)
- 2026年5月14日に上場来高値7,933円を記録
- 同日の決算後にストップ安(材料出尽くし)
- その後半値程度まで急落、現在は4,850円前後
- 時価総額は約2兆円規模
SWCC 株価推移
- 2024年〜2026年にかけて段階的に上昇
- 2026年5月決算発表日に高値19,220円まで急騰
- その後同日中に急落し16,990円で引け
- フジクラより出遅れ感があった分、割安感も残る
- PBRはフジクラ比で低水準
どちらも決算発表後に急落するという動きをしている点が興味深い。ところが、その理由が少し違う。フジクラは「最高益なのに期待に届かなかった」という”高望みリスク”。SWCCは「急騰後の利確売り」だ。
フジクラのPERは一時100倍超、PBRも20倍超という、いわゆるグロース株の水準まで買い進まれた。しかし、SWCCのバリュエーションはフジクラと比べてまだ落ち着いており、「相対的に割安」という評価も一部にある。
Competitive Advantage
なぜ「この2社」は強いのか
フジクラの護城河——「光接続」の二重の壁
フジクラの強さは「光ファイバーを売る+つなぐ機械も売る」というダブルの収益源にある。データセンターを建設するとき、施工業者はまず光ケーブルを大量購入し、次に融着接続機を使って現場で接続する。その両方でフジクラが選ばれれば、一つの案件で二度稼げる構造だ。
さらに独自のSWR構造の光ファイバーは高速・大容量通信を可能にしながらケーブルを細径化・軽量化できる技術で、GAFAMのデータセンター増設に直接採用されている。
SWCCの護城河——「換えられない部品」という圧倒的な参入障壁
SWCCのSICONEX®が選ばれる理由は「安いから」ではない。むしろ通常品より高い。それでも選ばれるのは、現場の総コスト(工期・人件費・耐震性)を圧倒的に下げるからだ。
一度採用された発変電所は、設備を丸ごと更新しない限り同じコネクターを使い続ける。これは医療現場で言えば「既存の医療機器に適合した純正パーツ」みたいなもので、一度採用されたら乗り換えにくい。このスイッチングコストの高さが、SWCCの安定収益を生み出している。
病棟での経験から言うと、「命綱になる機器」ほど、メーカーを途中で変えにくい。ラインや人工呼吸器の接続部品は、機器ごとに規格が違うから、一度選んだメーカーとは長いお付き合いになる。SWCCのSICONEX®は、変電所にとってそういう存在なんだと思う。フジクラは逆に、AIブームで一気に需要が爆発した「今が旬の機器」という感覚に近い。どちらも病棟に必要だけど、”使われ方”がまったく違う。
Risk Analysis
投資前に知りたいリスクの違い
フジクラのリスク
- 情報通信事業への一本足打法(集中リスク)
- PERが100倍超→期待はずれで急落リスク
- AI投資ブームが失速すると直撃を受ける
- 自動車事業の採算性改善が課題
- 材料・物流コストの上昇リスク
SWCCのリスク
- 直近で有利子負債が増加する局面も
- xEV・白物家電向け需要は低迷中
- フジクラほどの知名度・注目度がなく流動性低め
- 銅価格の高騰がコストを押し上げる
- 国内市場依存度がやや高い
フジクラのリスクは「高い期待への逆張り」だ。2026年5月に最高益を更新したにもかかわらず、決算後にストップ安に近い急落が起きた。これは株価にすでに「完璧な未来」が織り込まれているから、少しでも期待を下回ると売りが殺到する構造になっている。
そしてSWCCのリスクは「知られていないがゆえの乱高下」だ。フジクラほど注目されていないため、材料が出たときの値動きが急になりやすく、5月14日のような大きなボラティリティが発生した。
Outlook 2027〜
2027年以降、どちらが有利か
生成AIのデータセンター投資は、2030年に向けて拡大が続くと多くのアナリストが予測している。フジクラは光ファイバー生産能力を3倍に拡大する方針を打ち出しており、増産投資が本格化するタイミングが次の株価の焦点になりそうだ。
実は。SWCCも2026年2月に中期経営計画「Transformation for Growth SWCC 2030」を発表。2030年度の目標として営業利益400億円以上・営業利益率12%以上・ROIC15%以上という強気の数字を掲げている。2026年3月期の営業利益273億円から、2030年に400億円超を目指す成長シナリオだ。
また、国内の電力インフラ市場は老朽化した変電設備の更新需要が今後も活発に続く見通しで、再生可能エネルギーの普及も追い風となる。しかし、この需要はAI関連のように”急騰”ではなく”じっくり積み上がる”性質のもので、SWCCの収益は安定してはいるが爆発的な驚きをもたらしにくい側面もある。
📋 NURSE’S VERDICT ——看護師の診断
フジクラは「急性期病棟」、SWCCは「慢性期病棟」
フジクラはAIインフラという”急性期の需要”に対応する急性期病棟型の株。動きが速くリターンも大きいが、バイタルの変動も激しい。高PERゆえの急変リスクは常に頭に入れておく必要がある。
SWCCは電力インフラという”社会のライフライン”を支える慢性期病棟型。地味に見えるが、絶対に止められないインフラを担う安定性がある。現在の株価水準はフジクラより落ち着いており、配当の増加も魅力だ。
「成長を取るならフジクラ、安定と配当ならSWCC」——どちらが”正解”かではなく、自分のリスク許容度と保有スタイルで選ぶべき銘柄だと感じている。
Summary
まとめ——どちらを選ぶかは「あなた次第」
成長スピード
フジクラ ◎
安定性・配当
SWCC ◎
割安感(バリュー)
SWCC ○
AI直結度
フジクラ ◎◎
電線株というひとくくりで語られても、フジクラとSWCCはまるで別のキャラクターを持つ銘柄だ。フジクラはAIブームに直結した爆発的な成長力。SWCCは電力インフラという絶対に必要なものを担う磐石な事業基盤。
私はどちらも「今の時代に必要不可欠なもの」を作っている点で、長期的に注目し続けたいと思っている。ただし、フジクラは高値圏にある今、「押し目を待つ」という選択も十分あり得る。
ピークは遅い方がいい——これは株への向き合い方でも同じかもしれない。急いで飛び乗らず、自分が納得できるタイミングで、丁寧に検討してほしい。









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